ウィンケルマン【ドイツ】は数字を覚える記憶術を発明【17世紀】

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ウィンケルマンは数字を覚える記憶術を発明したドイツ人

ウィンケルマン(Winckelmann:1620年-1699年)はドイツの作家であり歴史家です。父親が神学者で、知識人の家庭に生まれているためウィンケルマンも厚い教育を受け大学に進学し、歴史、神学、哲学、法学を学んでいます。

後に、作家となり歴史家になりますが、記憶術家でもあります。

ウィンケルマンは、記憶術の歴史においては重要な人物になります。なぜなら、数字変換法ペグ法を考案しているからなんですね。わかりやすくいえば「数字を暗記する記憶術(数字変換記憶術)を発明した人」です。

それまでは数字を覚える記憶術のテクニックはありませんでした。しかしウィンケルマンが世界で初めて、数字を覚える記憶術を考案しています。

ですのでウィンケルマンをもってして「現代記憶術の祖」といえるんですね。ある意味、現代の記憶術はドイツ生まれといっても過言ではなくなります。

数字変換法記憶術~歴史年号・パスワード・生年月日など数字の暗記に最適

ウィンケルマンの数字変換記憶術は画期的

そもそも記憶術の歴史は、紀元前のギリシアのシモニデスやローマ時代のキケロクィンティリアヌスらに遡ります。彼らによって作られ生み出されたのが記憶術です。当初は弁論術(今でいうプレゼンテーション)に使われています。

その後、キリスト教神学(スコラ哲学)の暗記に使われ、またヘルメス主義といったオカルトにまで使われるようになります。

が、その後、大衆が使用する「記憶術」として登場します。そのきかっけは世界初の記憶術本を出したペトゥルスです。

こうした流れの後、ドイツにウィンケルマン(Winckelmann)が登場。「記憶術の専門家」として登場します。で、世界で初めて「数字を覚えるための記憶術(数字変換記憶術)」を発明します。

「記憶術(ニモニックス:Mnemonics)」はウィンケルマンが考案

ちなみに「記憶術(Mnemonics、Mnemonic Systems)」という言葉もウィンケルマンが考案しています。

ウィンケルマンは、記憶術に対してギリシア語の「ニモニックス(記憶術の義:Mnemonics)」という名称を付けています。※それまでは「Memory~」といった言い方をしていました。

今では「記憶術(Mnemonics、Mnemonic Systems)」という言い方は一般的ですが、実のところ、ウィンケルマンが命名したということですね。

ウィンケルマンの記憶術

そのウィンケルマンは先述の通りで「数字変換法」という記憶術を開発しています。また有名な「ペグ法」も開発しています。

数字変換法記憶術~歴史年号・パスワード・生年月日など数字の暗記に最適 ペグ法記憶術(かけくぎ法)~数字(電話番号・歴史年号)の暗記に強い

「数字変換法」は、現代では一般的な記憶術になっていますが、当時は斬新な記憶術でした。

なぜ斬新だったかといえば、それまでの記憶術はシモニデスの方法に見られるように全て「イメージ」と「場」を使った方法で、テクニックを多用していなかったからです。

もっとも、スコラ哲学時代やヘルメス主義時代にも「変換法記憶術」は出ていましたが、一般的ではありませんでした。記憶術の主流といえば「イメージ」と「場」を使った「場所法」です。

しかし、ウィンケルマンは、新しい記憶術の方法を打ち出します。それが「数字変換法」と「ペグ法」呼ばれる記憶術です。

数字変換法は、アルファベットと数字との関連性を作って暗記対象を覚える記憶術になります。

ちなみにウィンケルマンの記憶術は「記憶のシステム(mnemonic system)」と呼ばれています。

ウィンケルマンの数字変換法

ウィンケルマンは1648年に、スタニスロースという偽名を使って、ドイル新聞のマールブルクで独自の記憶術を発表します。それが「数字変換法」

ウィンケルマンの数字変換法は、その後1820年、フランスのエメ・パリらによって改良も加えられていきます。

しかし数字変換法としての記憶術を世の中に出したのはウィンケルマンになります。ウィンケルマンには次のような変換表を出しました。

0 = S, Z, soft(柔らかいもの)
1 = T, D
2 = N
3 = M
4 = R
5 = L
6 = J, sh, ch, dg
7 = K, Q, hard(固い缶のようなもの)
8 = F,V
9 = P,B

このように数字とアルファベットを対応させた一覧表を用意し、数字を覚えていくやり方です。

使い方は、上記の音(スペル)が先頭に来る単語が「数字」を示すというものです。この表を使えば、意味のある言葉や文章を使って、数字を暗記することができます。

歴史の年号や、電話番号、生年月日、暗証番号といった数字を暗記するための記憶術です。この方法を開発したのがウィンケルマンです。

ウィンケルマンのペグ法

ウィンケルマンの「記憶のシステム(mnemonic system)」はさらに進化していきます。その一つが現在知られている「ペグ法」です。

ペグ法では、こういった「ペグテーブル(一覧表)」を設定します。テーブルにはあらかじめ対応する「単語」が設定されています。数字に対応した単語をあらかじめ覚えておくわけですね。

さらに100までの数字と対応した単語表も用意されていきます。

数字を覚えたいときは、これらの単語をイメージと場を使って暗記していきます。

まさに「ペグ法」です。ウィンケルマンの時代から現在も何も変わっていないことがわかります。

ペグ法記憶術(かけくぎ法)~数字(電話番号・歴史年号)の暗記に強い

変換法記憶術は改良され続けている

ウィンケルマンは「数字変換法」を独自に発見したかに見えます。が、それ以前にも「変換記憶術」を作った人がいます。

数字変換法ではありませんが「ポンコンパーニョ」はアルファベットに変換する記憶術を作り出しています。

ウィンケルマンはポンコパーニョらの変換記憶術からヒントを得て作り出したと考えられます。

ウィンケルマンの記憶術と似た方法は、同時代の哲学者ライプニッツも見つけたとも言われています。

ちなみにライプニッツは、ウィンケルマンの記憶術だけでなく、ランベルト・シュンケルやアダムブルクシウスといった人の記憶術を参考にしています。

変換法記憶術~変換・分解・置換・外連想の4つのテクニックからなる方法

まとめ

このように15世紀のペトゥルスが行った記憶術の大衆化は、17世紀のウィンケルマンへと引き継がれて、キリスト教神学のスコラ哲学や、オカルトのカバラ・ヘルメス主義・新プラトン主義とは異なる記憶術の系統となっていきます。

やがて記憶術は一般大衆向けとして流布し、古代の記憶術(座の方法、場所法)は再び世の中に広まっていくようになります。

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