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記憶術を使っていたフランシス・ベーコン
フランシス・ベーコン(1561~1626年)はイギリスの経験主義の哲学者であり、帰納法を提唱したことでも有名ですね。
実は、フランシス・ベーコンは記憶術を使用していました。
ベーコンが記憶術を使用していたと聞くと、驚く方もいるかもしれません。が、これは事実でして、ベーコンは記憶術に言及しています。しかもベーコン自身が記憶術への深い造詣があり、実際に使っていたことも分かっています。
ベーコンが記憶術に造詣があったことは意外に思われるかもしれません。が、フランシス・ベーコンが44才の1605年に著した「学問の進歩」において、記憶術に関しての言及があります。
「現在の記憶術(ルネサンス期のヘルメス主義的な使い方の記憶術)は改善の余地があるし、無益な誇示のためではなく、有用な目的のために使用されるべきである」
「私にはその技術(オカルト的な使い方)よりも優れたやり方があるように思えるし、また今受容されているものよりも優れたその技術の実際の用い方があると思われる」
ご覧の通りです。
ベーコンは記憶術を学問的分野での使用を推奨
ちなみに当時のルネサンスにおいては、「ヘルメス主義」「新プラトン主義」「カバラ」、魔術といったオカルト的なサブカルチャー文化が勃興しはじめていました。記憶術はこのような怪しくも非科学的な世界で使われもしていました。※詳細こちら
ベーコンはオカルトなどの非科学的な分野に記憶術を使用するのではなく、学問的な分野で記憶術を使用することを言いたかったようです。
また、記憶術を魔術やオカルトの道具ではなく、学問において実用的な使い方をすることを提唱していました。
ベーコンが提唱した実用的な使い方とは、哲学などの学問的な知識を覚える使い方です。
ベーコンは古典的な記憶術を勧めた
ベーコンは、「記憶の宮殿」と「イメージ」を使ったシモニデスやキケロらの記憶術(座の方法)を学問に活かそうとする提唱でした。
フランシス・ベーコンは、66才の1627年に著した「森の森(Sylva Sylvarum)」において、
「記憶術を実験してみると、目に見えるイメージが他の奇抜な着想よりもよく作用することが分かってくる。たとえば「哲学」という単語を記憶したければ、自分自身が「哲学を勉強しよう」と発言しているのを想像するよりも、ある人間がアリストテレスの「自然学」を読んでいる姿を想像するほうが、必ずうまくゆくはずである。想像力が光輝くものではるならば、それは拡張力も大きく定着力も強くなる」
と言っています。
ここでフランシス・ベーコンは「想像の力(イメージ力)を使うことで記憶の定着を強くすることができる」といっています。まさにこれこそ記憶術の真髄です。
ベーコンが記憶術を使用していたことを示す典籍
哲学者の中でも大哲人とも言われるフランシス・ベーコンですが、彼が記憶術を使い、その効果を認めていたことは、
- K・R・ウォーレス著「フランシス・ベーコンの伝達論、修辞学論」
- W・S・ハウエル著「イギリスの論理学と修辞学」
- パオロ・ロッシ著「普遍の鍵」「フランシス・ベーコン」
といった研究書で明らかにされています。
デカルトも認めていた記憶術
ベーコンは記憶術を推奨していましたが、ルネ・デカルト(1596〜1650年)も認めていました。
デカルトは、方法序説や演繹法を提唱したことでも有名なフランスの哲学者ですね。
デカルトは「思索私記」の中で、ランベルト・シュンゲルという人物の記憶術について言及しています。この書では「記憶の宮殿」と「イメージ」を利用した記憶術が有益であることを述べてます。
つまり「場所法」は役に立つということを述べていたわけですね。ベーコンと同じ見解です。
ベーコンにしてもデカルトにしても知の巨人らは記憶術を認め、使用もしていました。知識人に愛好されていたのが「記憶術」という言い方もできます。
ちなみにベーコンとデカルトは、マインドマップの元祖となるラモン・ルルの記憶術にも長けていたといいます。
ラモン・ルルの記憶術はマインドマップのルーツ【13世紀】
記憶術を学問で使う
現代においては「記憶術は怪しい」「嘘くさい」「インチキだ」といった偏見があります。しかし歴史的に見れば、「知識を記憶するための効果的な手段」「学問的知識の記憶の方法」として認識され使われていたということですね。
しかも、この記事で紹介した通りでして、ベーコンやデカルトといった哲学者も「記憶術を推奨」していました。
記憶術は元々、弁論家や哲学者が発明した方法ですので、アカデミック(学問)で使われることは当然といえば当然ですね。
現代においては、学校での勉強はもとより「受験」「資格試験」での活用がもっとも現実的かもしれません。
現代においても記憶術を使用しないのは勿体ないとしか言いようが無いかと思います。